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ただ宇宙を想い、運命を愛する

救いの手

 

夜勤明け

病棟の電話へ

わたし宛に電話をかけたのは

以前異動した先輩でした

 

自分の部署へ

立ち寄ってくれと言うので

足を運ぶと

お誕生日プレゼントをくれました

 

“お誕生日おめでとう

3月になると

あなたを思い出すんだ“

 

“逢って話しがしたかった

大変だと思うけど、調子はどう?“

 

この人は

なんて優しいのでしょう

 

わたしの心を

するすると溶かしていきました

 

といっても

一緒に働いていた時

特別仲が良かったわけじゃないのです

 

わたしが転職をして

新しい環境に慣れないわたしを

フォローしてくれました

 

今思えば

ほぼ20代の血気盛んな

急性期外科の病棟から

 

ほぼ50代の大ベテラン揃いの

看取り病棟という

真逆の環境に足を踏み入れ

目の前の毎日に必死なわたしに

 

はじめて声をかけてくれたのも

その先輩でした

 

“わたしも緩和ケアを希望して

異動してきたから

同じく希望してきたあなたがくるのを

楽しみにしていた“

 

初日で緊張しているわたしに

そんな風に言ってくれたことを思い出しました

 

その先輩はとても人見知り

 

いつもわたしに話しかける時

少し緊張しながらも

深いやさしさを与えてくれました

 

性格は真逆

 

わたしは計画性のない感性の人間

 

先輩は石橋を叩きすぎて

渡れなくなる性格だと

ご自身でも言っていました

 

とても真面目で信頼できる人

 

けれども?

誕生日が同じなんです

 

じゃあ似ているのかと言われると

似ているところ探しより

先輩の素敵な人柄がいくつも浮かびます

 

そんな先輩と

同じ誕生日って

なんだか嬉しい

 

仕事の話し以外

ほとんどしたことがなかったのに

わたしを認識してたということに

少し驚きました

 

この世界は

ふしぎで、あたたかいと思った

 

プレゼントに

同封されたメッセージカードに

“あなたは人を

やさしい気持ちにしてくれる才能がある人

そんなあなたを陰ながら応援しています“

 

そんな言葉が記されていました

 

そのとき気付きました

 

わたしは先日の地震

少し心が強ばっていたようだ

 

先輩に逢ったことで

その強ばりが

するすると溶けている

 

特別なものは

特別な日に使いたい

と思うこともありますが

 

今使いたいと思い

湯に浸かると

全身からこわばりが抜けていきました

 

こわばりの正体は

定期的に感じるもの

 

突き進めば突き進むほど

時折感じる孤独

 

ただ宇宙を想い

魂を燃焼させて生きることで

わたしはそう感じるけれど

 

修行僧や芸術家など

自分なりのお役目や

達成したいものがある人は

同じようなことを感じるのか

 

もしかしたら

誰にだってそういう感情は

起こりうるのかもしれない

 

宇宙を意識してもしなくても

みながこの宇宙を生きているのだから

 

本当の意味では孤独じゃないのに

本当の意味では孤独ということ

 

意識してなかったけれど

脱人間を感じると

自分の変化に興味深かったり

異次元や

重力がないので

軽やかに楽しかったりするけれど

 

一方で

世間を生きている人と

あまりにもかけ離れてしまうと

運命のままに

自分の道を生きるしかないと

ふと、孤独に

気付いてしまう自分がいるようです

 

今思えばこれは

幼少期から続いてることですが

初めて言葉にしてみて

運命を生きる人間の強さと儚さ

そして改めて

宇宙の厳しいやさしさを感じました

 

無自覚でしたが

地震体験の言葉は

こんな変化がありました

という意味と同時に

気付いたらこんなに変わってしまった

というわたし自身の

メッセージでもあったんだなと

気が付きました

 

現象を無意識にとらえ

哲学的に問うてしまうのは

考えてる自覚はなく

息をするように

気付いたらすでに自分なりの答えが出ている

わたしの運命

 

先輩の言うようなわたしも

脱人間の独りのわたしも

どちらもわたし

 

すべて答えがあるのも宇宙

答えを追求し続けるのも宇宙

 

それこそ

わたしが生きる

きびしくやさしい宇宙

 

わたしはこれからも

そのどちらもを生きていこう

 

大丈夫だ

必要なときに

救いの手が入る

この世界はやさしい